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Carpe Noctem☾⋆

星の見えない、都会の夜は美しい。

くたびれた靴裏で、僕は歩く。

二月の北風が頬を撫でて、冷たさに目を細める。

イヤホンから流れるのは、いつかの夜に聞いた曲。

ぱちぱち瞬く街灯の下で、深呼吸を一つ。

悴んだ手をポケットに仕舞って、マフラーに顔を埋める。

夜から表情を隠すように、僕は歩く。

コンビニの眩しい店内が、目印のように光っている。

ふらりと風に誘われて、自動ドアが無人の客を招く。

荷物の重さに憂鬱になって、それでも下ろせないから歩いていく。

ビルに灯った規則的な明かりは、僅かに違う色を宿している。

夜を暮らす誰かの感情を映すように。

泣いている人がいる。笑っている人がいる。怒っている人がいる。

知らない誰かの感情に拘って、気分が沈んでいく。

俯いた先のアスファルトは、暗い夜空を反射している。

どこまでも広がる小さな宇宙を、片足ずつ踏みしめる。

僕らは一人一人、宇宙船のように浮かんでいる。

光の海に溺れるように、僕は歩く。

喧騒と静寂に塗れて、今日も変わらず夜が更けていく。

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